4月2日にリリースされた最新作『Our』の自己解説文を作成しました。
最後には録音とミックスを担当して頂いた石本さんによるライナーノーツも
掲載させて頂いています。
少々長い文面ですが、『Our』を聞きながらじっくりお読み下さいませ。
〜〜〜〜中村好伸による『Our』 自己解説〜〜〜〜
maorecordsからの三作目となる『Our』。 今までの作品とはひと味もふた味も
違います。 過去の『望郷ヘクトパスカル』や『望郷デッサン』までのシリーズの
流れとは違い、新しい試みを取り入れました。 これまで自分のアルバムはその
ほとんどが自宅での録音、 いわゆる宅録をメインとしてきましたが、今回は初の
スタジオ レコーディングとなっています。ライブ感漂う中で演奏したその空間を
切り取ったような作品です。
さらに、ここ数年ライブでサポートを務める赤坂ミチル(woodbass)、岩本象一
(percussion)と中村のトリオ編成での編曲&レコーディングがメインとなりま
す(アルバム中4曲に鍵盤奏者の浦清英が参加) 。
また極限までに音数を減らし、いわゆるオーバーダビング もライブで再現できな
いトラックは作らずあくまで生演奏というキーワードに拘って制作しました。その
ため収録はほぼ一発録りで、その場の三人が鳴らしている音を忠実に収音するとい
う事に専念しました。
これまでの自分のアルバムと比べてもギターの音数が少ない上にラフで荒削り
な部分をあえて残しました。 それぞれの楽器がいきいきと有機的な音に感じて頂け
たら嬉しいです。
そしてアルバムのテーマとして『望郷』というキーワードを使ってきましたが、今
回のその作風の変化から、『Our』、つまり「私たち」というタイトルにしました。
さらに今作のCDジャケットインナースリーブの写真は衣斐誠くん、そしてジャケット
デザインはおなじみの明里正毅くんです。こちらもCDを1つの作品をして見事に
パッケージングして頂きました。
(中村好伸による全曲紹介)
01.カモメモード
アルバムの冒頭を飾る『カモメモード』。2分ちょっとの序章(プロローグ)的な
短い曲です。まだタイトルが決まっていない時にperの岩本象一に聞かせたところ
すぐ(海)というキーワードが出てきたと言っていました。そこからこのタイトル
に決めました。0分23秒から聴こえてくる音はまさにさざ波を意識していた岩本象一
の音使いです。
ギターチューニングはopenD。
使用ギター:Gibson Country Western (1957)
02.山の陰から
今回のアルバムに収録されている曲の中では最も古い曲で、作ったのは2001年頃
だったと思います。長い間演奏してきている曲です。その時々によって曲もいろ
いろな表情を表しますが、ようやくひとつの形になってきたこのタイミングで録音
してみました。(山)と(陰)、いわゆる山陰地方に想いを馳せつつ。厚い雲、
日本海からの湿った空気、どこまでも続く緑豊かな原風景をイメージしました。
この曲はピアノに浦清英も参加しています。後半のたたみかける様なピアノは
必聴です。
ギターチューニングはレギュラーで4カポ。
使用ギター:Gibson Country Western (1957)
03.チベッツの風
独奏曲。『チベッツ』とはSTEVE TIBBETTSのチベッツです。実はSTEVE
TIBBETTSのアルバムを聴いていた時に思いついたコード展開を用いており、
そのままTIBBETTS風という仮タイトルがついていたのですが、その後正式な
タイトルを考える際そのまま『チベッツの風』という名前にしました。
STEVE TIBBETTSとの出会いはたまたま音楽好きな友人からCDを紹介してもらい、
それから虜になってしまったのです。独のECMレーベルを主として数枚のアルバムを
出している人で、ニューエイジからオリエンタル、サイケデリック・ジャズ、までか
なり奇妙なトーンで独自のサウンドを奏でてる奇才。そう言えばこの人もBlack
Mountain Sideのカバーをやっていましたね。
チューニングは6弦からBF#BF#BE♭で2カポ。
使用ギター:Martin D-35 (1969)
04.The momentary scene is beyond my mind
この曲は12年ほど前に書いた曲です。ここ最近、ライブでも演奏する機会が増
えてきたので、このタイミングで録音してみました。アコギ&ギターバンジョー:
中村、パーカッション:岩本、ウッドベース:赤坂、アコーディオン:浦が
参加しています。今回の作品の中では一番アップテンポな曲。コード展開や
曲構成など、改めて聴くとさすが12年も前に作ったなんとなく若々しい曲です。
ギターチューニングはopenDの2カポ。
使用ギター:Martin 00-18 (1951)
05.まどろむ人
この曲も比較的古い曲です。全編ワルツでまとめています。
温かい太陽の陽射しが部屋を支配する昼下がり、まどろみながらうとうとして
いる様をイメージしています。ただ演奏は若干エネルギッシュになっているのも
トリオ編成の面白いところでしょうか。
ギターチューニングはopenD。
使用ギター:Gibson Country Western (1957)
06.夏の終わりのフォークロア
独奏曲。イメージはちょうど9月末あたりの暑かった夏が終わりようやく涼しく
なってきた時期の夕方の空気感。虫の音もようやく沈静化し、ぼんやり夕日を眺
めながら去り行く夏を惜しむような曲といいましょうか。
ギターチューニングはレギュラー。
使用ギター:Martin 00-18 (1951)
07.Walking Free
(Walking Free )
いわゆる散歩をイメージしました。BPMは118。若干早歩きのお散歩のテーマ曲です。
ギターチューニングはレギュラー。
使用ギター:Martin 00-18 (1951)
08.朝靄ごしに
靄がかった森の中で朝日が昇る景色をイメージしました。
変則チューニングのアコギに色とりどりな楽器を使い確実にリズムを刻むパーカッ
ション、骨組を支えるウッドベース、優しく且つ繊細に包み込むローズピアノの旋律
がいろいろな情景を描いていきます。
ギターチューニングはDADF#AE。
使用ギター:Martin 00-18 (1951)
09.Wolu
この曲はperで参加の岩本象一君の作曲です。(Wolu)とはインドネシア語で数字の
(8)。8を横にすると∞。つまり『無限』を意味しています。ずうっと続く永遠を
イメージしたそうです。岩本くんの使用楽器はスリットドラムと呼ばれる木の幹を細
い割れ目を残し内部を空洞にくりぬいた打楽器です。なんともうっとりした音色の
フレインが続きます。
ギターチューニングはレギュラーで2カポ。
使用ギター:Martin 00-18 (1951)
10.Moorland
(Moorland)とは荒れ地や泥炭地といった意味。植物や農耕に適さない荒廃した
広大な土地をイメージした。しかしそんな荒れ果てた土地にも少なからず雑草の
ような植物が生い茂る事もあるといいます。中間部のウッドベースの叙情的な弓
弾きとピアノの調べはまさにそんな荒れ地の土壌から突然不釣り合いな植物がゆら
ゆらと生い茂っているかのような風景をイメージしました。さらに最後の大サビ
にはそんな強い逆光の中で果敢に攻め続けるという、開拓者的なイメージも
実は持っています。
ギターチューニングはopenD。
使用ギター:Gibson Country Western (1957)
11.Inglenook
独奏曲。イングルヌックとはアイルランドなど北欧でよく見られる暖炉の小部屋
といった意味。寒い冬の夜、燃える暖炉の火を囲みながら、暖かくまったりした
空間をイメージしました。
ギターチューニングはレギュラーチューニング。
使用ギター:Gibson Country Western (1957)
(録音、ミックス担当 石本聡によるレコーディング・ライナーノーツ)
今回のレコーディングは基本宅録でやっていた今までの2枚とは異なり、ここ数年間
全国を回ってきたトリオ編成(アコギ、ウッドベース、パーカッション)でのバンド
感をなるべくパッケージしたいと考えました。当初はどこかだだっぴろい場所で
「せーの」でやりたいなと思っていたのですが、諸々の兼ね合いでそれは叶わず…。
なので最終的にはセパレートルームのあるレコーディングスタジオとなりましたが、
ヘッドフォン越しとは言え一発録りを行うこちになりました。3人とも顔を見合わせ
ない形での演奏に最初は戸惑っていましたが、徐々に雰囲気にも慣れ、いつものライブ
と同じようなノリが出始めてからはとてもいいテンポで進んでいきました。
今回の録音のもうひとつのテーマ、それは「アコギをできるだけいい音で録音する」
というものでした。宅録のカジュアルな音質も味があるのですが、アコギのふくよ
かさ、まろやかさをできるかぎり再現したいという思いが僕の中に強くあり。なので
ヴィンテージマイクプリを使い、コンデンサマイクを3本立てて太く太く録ろうとい
うのを心がけました。
ミックスダウンでは過剰に潰したり持ち上げたりという事をせず、というかそういう
風に聞こえないようなトリートメントを心がけました。アコギのさーっというノイズ
も消そうと思えば消せるのですが、それによって音質が変わってしまうのが嫌で残し
たりしましたね。
マスタリングも同様で、昨今流行の海苔波形には絶対せずにちゃんと曲の盛り上がりに
合わせてダイナミクスが変化していくよう心がけました。なので他のCDに比べると音量
は小さいのですが、ボリュームを上げてもらえれば問題ないですし、ずっと聴いていても
疲れないと思います。(石本聡)

Our/中村好伸
2014年4月2日発売
価格:2000円
品番:maocd-36
以下のサイトよりitunesや通信販売も可能となります。
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『Our』ができるまで









